ログイン
メインメニュー

2006-12-13: Minimal Manufacturing and Maximal Servicing
担当者 Mihoko Otake  登録日時 2006-12-20 23:31 (2143 ヒット)

日時:2006年12月13日(水) 13:30-14:00
場所:東京大学柏キャンパス総合研究棟
講演者:吉川弘之
所属:産業技術総合研究所 理事長
キーワード:持続的発展、物質循環、情報循環、最小製造、最大サービス

要旨:
科学技術は、地球環境の持続と、これを実現するための開発速度の向上に向かって進展させるために、産業変革が必要になる。自然において物質循環と情報循環は同時に発現しているが、現代の製品は物質循環がないため、持続性がない。物質循環を実現するためには、自然から人工物へ変換する「製造」と併せて、人工物を自然へ返す「逆製造」のプロセスが必要になる。

ここで、製品とサービスの関係について述べる。サービスにはメッセージ型とマッサージ型の二種類に分類することができる。これらのサービスを製品に埋め込むと、前者は放送となり、後者はマッサージ機械となる。自動車は増幅されたマッサージ型サービスであり、身体の移動を実現する。すなわち、製品の機能とは、製品に埋め込まれたサービスのことであり、機能は製品が使われた時にサービスとして現れる。

使用される際に生成する機能、すなわちサービスを構成するプロセスである「逆使用」と組み合わせて、「製造」「使用」「逆製造」「逆使用」の四つのステップにより、物質と情報の循環のループができる。したがって、最小の資源、エネルギー、および廃棄物で、最大の機能を持つ製品を生産する製造システムである「最小製造」と、最小の資源、エネルギー、および廃棄物で最大のサービスを行うサービスシステムである「最大サービス」を可能にする要素技術が求められる。前者は自然科学を基礎とする科学技術が基本となり、後者は社会科学を基礎とする社会技術が基本となる。

このような要素技術を開発するアプローチとして、基礎研究と製品化研究の間の死の谷をつなぐ第二種基礎研究の重要性を提唱している。このような役割を、独立行政法人である産業技術総合研究所が担い、特に、科学技術知識の供給者と使用者の間をつなぐ産業技術構成者(アーキテクト)を育成したいと考えている。

参考文献:
吉川弘之 科学者の新しい役割(岩波、2002)
吉川弘之 テクノロジーの行方(岩波、1996)
吉川 弘之、内藤 耕 第二種基礎研究(日経BP社、2003)
吉川 弘之、内藤 耕 「産業科学技術」の哲学(東京大学出版会、2005)
持続性に向けた産業科学技術委員会(産総研)
Ferdinand de Saussure、小林英夫訳 一般言語学講義(岩波、1972)
山家譲二 還元工場論、(工業技術、1975)

専門分野:
一般設計学、生産システム

参加学会:
The International Academy for Production Engineering(CIRP)、The Institute of Electrical and Electronics Engineers(IEEE)、精密工学会、日本機械学会 他