2006-04-27: ヒトセミナー(18)
担当者 OtakeM 登録日時 2006-04-12 23:43 (3529 ヒット) 日時:2006年4月27日(木) 13:00-14:15 場所:柏総合研究棟663号室 発表者:山本裕一 所属:東京大学大学院経済学研究科 博士課程一年(発表時) タイトル:人々の長期的関係を通じた暗黙の協調 キーワード:ミクロ経済学、ゲーム理論、フォーク定理、繰り返しゲーム、私的モニタリング 書誌:山本裕一,人々の長期的関係を通じた暗黙の協調.ヒトセミナー要旨集, no.18, pp.1, 2006.
(本発表ならびに本要旨について引用する際は、こちらをご利用ください。) 要旨: ゲーム理論とは, 「社会の中で利害が必ずしも一致しない人々が存在するときには, どのような行動が取られるのか」を分析する学問である.このような状況では一般に, 人々は相手の出方を読んだ上で自分の行動を決めることになるが, その相手もまたこちらの出方をうかがっており,解くべき問題は非常に複雑になる. 我々はまず, ゲーム理論における基本的な解概念であるナッシュ均衡を定義し, これが前述の「互いの行動の読み合い」の結果として妥当な解概念であることを考察する. さらに, ナッシュ均衡では一般的に, 社会的な効率性が達成されないことを確認する.これは直感的には, 各人が「自分自身の利得を高めるためならば, 他人に多少の迷惑をかけても構わない」と考えて行動することに起因する. 続いて我々は, 人々が長期的な関係を持つような状況を分析する. このときは, 先ほどの悲観的な結果とは逆に, 社会的な効率性を達成するナッシュ均衡が必ず存在する. これは, 「あまりに自分勝手な行動を取ると来期以降相手からの信用を失うから, 結局, 協調的な行動を取ることが自分にとって最適になる」というロジックが働くためである. 最後に, 著者自身による研究の紹介として, 「毎期, 相手のとった行動を一定確率に見間違えてしまうような長期的関係」における経済主体の行動を分析する. このような状況下でも, ある種のゲームでは協調的な行動が行われることを, 理論的に説明できる. 参考文献: [1] V. Bhaskar and I. Obara. Belief-based equilibria in the repeated prisoner’s dilemma with private monitoring. Journal of Economic Theory, Vol. 102, pp. 40–69, 2002. [2] J. Ely, J. Horner, and W. Olszewski. Belief-free equilibria in repeated games. Econometrica, Vol. 73, pp. 377–415, 2005. [3] J. Ely and J. Valimaki. A robust folk thorem for the prisoner’s dilemma. Journal of Economic Theory, Vol. 102, pp. 84–105, 2002. [4] D. Fudenberg and E. Maskin. The folk theorem in repeated games with discounting and with incomplete information. Econometrica, Vol. 54, pp. 533–554, 1986. [5] D. Fudenberg and J. Tirole. Game Theory. MIT Press, 1991. [6] J. Horner and W. Olszewski. The folk theorem for games with private almost-perfect monitoring. mimeo, 2005. [7] M. Kandori. Introduction to repeated games with private monitoring. Journal of Economic Theory, Vol. 102, pp. 1–15, 2002. [8] A. Mas-Colell, M. Whinston, and J. Green. Microeconomic Theory. Oxford University Press, 1995. [9] H. Matsushima. Repeated games with private monitoring: Two players. Econometrica, Vol. 72, pp. 823–852, 2004. [10] J. Nash. Equilibrium points in n-person games. Proceedings of the National Academy of Science, Vol. 36, pp. 48–49, 1950. [11] T. Sekiguchi. Efficiency in repeated prisoner’s dilemma with private monitoring. Journal of Economic Theory, Vol. 76, pp. 345–361, 1997. [12] Y. Yamamoto. A belief-free review strategy in repeated games with private monitoring. mimeo, 2006. |